ラーメンの主役といえば、麺かスープ。けれど、11月10日に発売予定の新商品には、もう一人の主役がいます。実がなるまで15年以上かかることもある、柚子です。
その名は「YUZU×RAMEN(ユズ・ラーメン)」。2025年の大阪・関西万博で披露されたラーメン企画から生まれた、植物性の乾麺とスープのセットです。どうして一杯のラーメンに、そんなに長い時間をかけて育つ果実が選ばれたのでしょう。
同じ柚子でも、育て方が違う
柚子と聞けば、鍋に添える皮や、湯気とともに広がる香りを思い浮かべます。でも今回使われるのは「実生(みしょう)柚子」。種から育てる柚子のことです。
開発元の不二製油によれば、一般的な接ぎ木栽培の柚子が収穫までおよそ4〜5年なのに対し、実生柚子は結実まで15〜18年かかるといいます。これは今回の発表に記載された目安で、すべての木が同じ年数で実るという意味ではありません。
長く待って、ようやく実る。その一方で、栽培を続ける人の高齢化や収穫の担い手不足という課題もあるそうです。果実そのものをおいしく使うだけでなく、育てる営みを次につなぐことも、今回の開発の背景にあります。
実生柚子は、普通の柚子と何が違う?
実がなるまで15年以上。なぜ、そこまで時間のかかる実生柚子を使うのでしょうか。
その理由を考えるうえで、興味深い研究があります。
香料メーカーの長谷川香料は2023年、高知県の同じ農園で育った実生柚子と接ぎ木柚子の香り成分を比較しました。
その結果、実生柚子からは、香りの第一印象に関わる成分や、香りの奥行きに関わる成分が多く検出されました。
さらに、特徴的な香気成分を柚子香料に加える実験では、花のような香りや果実らしさ、果汁感、果皮感が強まったと報告されています。
つまり、実生柚子の豊かな風味には、香りの成分という科学的な裏付けもあるのです。
もちろん、産地や栽培条件によって違いはありますし、今回のラーメンそのものを比較した研究ではありません。
それでも、あえて実生柚子を使うことには、希少性だけではない理由が見えてきます。
今回の「YUZU×RAMEN」では、柚子の皮だけでなく、種やワタまで使ったホールペーストを採用。さらに、植物性だしによって、柚子の繊細な香りとラーメンとしての満足感を両立させる設計です。
柚子を単なる香りづけではなく、一杯の主役として楽しんでもらいたい。
そんな商品づくりの意図が見えてきます。
参考資料: 長谷川香料「実生ユズの風味の豊かさに寄与する成分の解明」(2023年4月20日)
https://www.t-hasegawa.co.jp/research/document/133
きっかけは、万博で生まれた「もう一度食べたい」
2025年の万博で、不二製油は「THE RAMENS」という体験型企画を展開しました。酒粕、棒ほうじ茶、梅、抹茶、オリーブ、紫芋、柚子。日本各地の素材をラーメンという身近な食べ物に置き換える試みです。
発表によると、その中で商品化を望む声が多かった味が柚子でした。来場者の反応をきっかけに、一度限りの体験を家庭でも楽しめる商品へと育てることになったのです。ただし、人気順位や希望者数などの具体的な調査データは公開されていません。
ここに加わったのが、京都発の会社「七十二候」。同社は公式サイトで、実生柚子を使った商品づくりや、柚子の栽培文化を引き継ぐ活動を紹介しています。万博で生まれたアイデアと、柚子を未来に残したい人たちの取り組みが、一杯のラーメンで結びつきました。
皮だけでなく、種やワタまで
この商品の特徴は、柚子を果汁だけで使わないことです。発表では、皮、種、ワタまで活用した「ホールペースト」をスープに使用すると説明されています。
柚子の皮を少し削って香りを足すラーメンとは、考え方が違います。果実のさまざまな部分を素材として生かし、その香りを一杯の中心に置こうという設計です。実際にどんな香りや後味になるのかは、発売前で実食していないため断定できません。
肉や魚のだしを使わず、どう満足感を作る?
もう一つの工夫がスープです。不二製油は、植物性素材で食べ応えを表現する独自技術「MIRACORE(ミラコア)」を展開しています。今回のラーメンには、その技術を応用した植物性だし「MIRA-Dashi(ミラダシ)」が使われます。
豚骨や鶏ガラの強い風味で押すのではなく、柚子の繊細な香りを生かしながらスープの満足感を目指す。そんな組み立てです。動物性原料を使用しないと発表されていますが、アレルギー対応や特定の食事基準への適合を保証する情報ではありません。購入時には商品表示を確認してください。
いつ、どこで買える?
「YUZU×RAMEN」は、2026年11月10日(火)から数量限定で販売予定です。乾麺とスープのセットで、株式会社七十二候のオンラインストアを通じて販売されると案内されています。
価格や内容量、販売終了日は今回確認した発表では明示されていません。発売日や在庫は変更される場合があるため、購入前に販売先の最新情報を確認するのが確実です。
一杯の向こうにある時間
ラーメンを食べる時間は、ほんの十数分かもしれません。でも、その香りを生む柚子の木は、実るまで十数年という時間を重ねています。
万博で生まれた発想が、京都のものづくりと出会い、家庭で味わえる商品になった。今回のニュースの面白さは、新しい味が登場したことだけではありません。普段は見えにくい、素材を育てる人の時間まで一杯の中に見えてくることです。
次に柚子の香りを感じたら、その果実がどんな年月を経て届いたのか、少し想像してみたくなりますね。
出典・確認情報
- 不二製油「万博から生まれた『YUZU×RAMEN』発売」PR
TIMES、2026年11月4日発表:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000143489.html - 株式会社七十二候
公式サイト(実生柚子の取り組み):https://72kou-kyoto.com/ - MIRACORE
公式サイト(植物性だしの技術):https://www.miracore.jp/ - 長谷川香料「実生ユズの風味の豊かさに寄与する成分の解明」(2023年4月20日)
長谷川香料株式会社 | 実生ユズの風味の豊かさに寄与する成分の解明 | 論文・学会東京都中央区。飲料・食品向けおよび家庭用品向けの香料の製造。会社・IR情報、業務紹介。
※発売日・商品仕様・万博での反応は企業発表に基づきます。実食レビューではありません。確認日:2026年11月6日。

